拘縮鼻の重度修正：短く上向いた鼻を再建する戦い

重度修正の症例紹介

今回ご紹介するのは、前回の手術で拘縮が起こり、鼻が強く上向いてしまった患者様です。
正面から見ると鼻の穴が大きく露出し、日常的にも大きなコンプレックスとなっていました。
「この状態を何とか改善したい」というご希望で、修正手術を決意されました。

拘縮鼻修正の難しさ

拘縮した鼻の修正は、鼻整形の中でも最も難易度が高い領域です。
皮膚・軟骨・粘膜のそれぞれが硬く、伸展性を失っているため、
高さと長さを同時に十分に出すことは極めて困難です。

また、一度の手術で完璧な改善が難しいケースも多く、追加手術が必要となる場合もあります。
さらに、術後も長期にわたり後戻りの力が加わるため、非常に慎重に計画を立てる必要があります。

このため、日本国内でも拘縮鼻に対して戦略的に修正できる医師は限られているのが現状です。
術者にとっても、患者様にとっても「長い戦い」になることが多いのです。

今回の手術内容

• 重度修正

• 鼻中隔延長（肋軟骨）

• 鼻尖形成

• 耳介軟骨移植

• プロテーゼ抜去

• 自家組織による隆鼻

• 鼻翼基部・鼻柱基部 augmentation（猫貴族手術）

これらを組み合わせることで、拘縮により短縮された鼻を再建し、自然な長さと形を取り戻すことを目指しました。

【重度修正】鼻中隔延長（肋軟骨）＋鼻尖形成＋耳介軟骨移植＋プロテーゼ抜去＋自家組織による隆鼻＋猫貴族手術
の術前と術直後の写真

術中の判断と優先順位

拘縮修正では「すべてを一度に完璧に直す」ことは現実的ではありません。
そのため、何を優先するかを明確にすることが重要です。

今回の患者様は「長さと鼻の穴の見え方を最優先にしてほしい」とのご希望でした。
そこで、鼻中隔延長のベクトルを主に“長さ方向”へと振り分け、
鼻先の角度と露出度を大きく改善することを選びました。

【重度修正】鼻中隔延長（肋軟骨）＋鼻尖形成＋耳介軟骨移植＋プロテーゼ抜去＋自家組織による隆鼻＋猫貴族手術
の術前と術後の症例写真

術後の変化

• 正面から：鼻の穴の見え方が大きく改善。短かった鼻が伸び、全体のバランスが整いました。

• 斜めから：鼻先がしっかりと前方へ出ているのが分かります。

• 横から：鼻の長さがはっきりと改善。高さについては少しだけ増高を加えましたが、
  　これ以上高さ方向に振ると形の崩れや後戻りが強まるため、あえて抑制しました。

【重度修正】鼻中隔延長（肋軟骨）＋鼻尖形成＋耳介軟骨移植＋プロテーゼ抜去＋自家組織による隆鼻＋猫貴族手術
の術前と術後の症例写真

まとめ

ここ数年、拘縮鼻の修正相談は確実に増加しています。
美容医療の普及によって鼻整形を受けられる方が増える一方、術後に形態異常や拘縮といったトラブルで悩まれる方も少なくありません。

手術に「100％の安全」は存在しません。拘縮は誰にでも起こりうる合併症です。
しかし本当に大切なのは、もし拘縮が起きても、その後をきちんとリカバリーし、美しい形へ導く姿勢と責任だと私は考えています。

拘縮鼻の修正は一度の手術で終わらないこともあります。
数回の段階的アプローチや長期的な経過観察を必要とするケースも多く、術者と患者様の双方にとって「長い戦い」になる場合もあります。
だからこそ、戦略を持って丁寧に対応できるかどうかが結果を左右します。

最近では「自院での修正は難しい」と断られ、当院に相談に来られる方が増えています。
同じように困っている方にとって、当院が少しでも力になれる存在でありたいと考えています。
鼻の修正は決して簡単ではありませんが、最後まで責任を持ってサポートさせていただきます。